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ヒタチナカリュウ(ひたちなか竜)の化石?
(山本信雄)

    2003年4月25日号の市報「ひたちなか」(茨城県ひたちなか市)に、「ひたちなか市平磯海岸の中生代白亜紀層から2002年に発見された新種の翼竜よくりゅうの化石がヒタチナカリュウと命名された」という記事が次図のようにりました。この海岸からは白亜紀の変わった形のアンモナイトの化石がいくつか発見されているので有名な所ですが、翼竜の化石は初めてで、しかも、新種と国際的に鑑定されたのです。

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ヒタチナカリュウの化石発見を報ずるひたちなか市報
2003年4月25日号

同上の化石

    これにさかのぼること20年前の1980年頃に、私は平磯海岸の北4キロにある、阿字ヶ浦と米軍対地射爆場跡地たいちしゃばくじょうあとち(現在の国営常陸ひたち海浜公園)との境界の波打ちぎわの砂浜に転がっていた化石を見つけていました。それを次図に示します。
   この化石の骨は時代を経て黒光りをしていてナイフの刃がまったく立たないくらいカチカチに固まっています。また、おおっている岩石もきわめてかた砂岩さがんで、黒い骨を掘り出すことはまったく不可能です。私は中生代白亜紀の海竜の化石ではないかと思いました。それで、つくば研究学園都市にある地質調査所に鑑定に持って行きました。若い研究者はあまりにも硬い砂岩に閉口へいこうしながら、黒い骨をもう少し露出ろしゅつするべく歯医者さんが使う電動カッターでけずり出しました。そこで「骨の組成からみて海竜か、または、翼竜かも知れない。」と言います。私に「どこで産出しましたか。」と聞くので、私が「白亜紀層近くの海岸に転がっていました。」と答えると、研究者は「はっきりとした地層からの産出でないと化石の学術的な価値はありません。」と興味を示さなくなりました。それで仕方なく、そのまま家に持ち帰り、長年ほうりっぱなしにしてあったわけですが、上記の市報の記事を見て、「まさにこれだ。」と私なりに結論付けました。


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私が採集していた翼竜と思われた化石
(大きさは上左の画像で、横93mm×縦84mm)

1980年頃にひたちなか市阿字ヶ浦で採集

    2014年8月26日(火)午後、ひたちなか市生活・文化・スポーツ公社 文化課 副参事兼文化財調査事務所長の鈴木泰行氏(ひたちなか市埋蔵文化財センター所属)のお計らいで、茨城県自然博物館 企画課 主席学芸員の國府田こうだ良樹 博士に鑑定していただきました。博士いわく「何の骨かは分からない。きちんとした地層から出土したのなら、鑑定のしようがあるのだが。」と。すなわち、上記の地質調査所の鑑定と同じく、出土した地層がはっきりしない化石は鑑定する価値がないということです。それは、学術研究としての研究基盤を欠いているからです。


    2014年12月20日(土)に   茨城県北ジオパーク   (   その2   )主催の「阿字ヶ浦ジオ散歩」に参加しました。海岸の中生代白亜紀層の地層を見学し終わって、私は例の化石の鑑定をジオパーク職員の荒川和子様にお頼みしました。荒川様が茨城大学理学部の   安藤先生   に鑑定していただいたようで、3日後の2014年12月23日(火)に鑑定結果が次の様にメールで届きました。荒川様に感謝です。
   安藤先生からののコメント:
「周りの砂岩の様子から、白亜紀のものではなく新生代中新世のものだと思います。(新生代中新世の軽石を含む「石灰質凝灰岩質砂岩」と思われます)中の骨は海生哺乳類の肋骨ではないかと思われます。哺乳類の種類はよくわかりません。(その時代の哺乳類の専門家ならわかるかもしれません。)」
ということです。
    ひたちなか竜の化石でなくて残念でした

    2021年2月10日発行の市報ひたちなか No.628(茨城県ひたちなか市)8面に下図のような記事がありました。 要するに、2002年に発見され、2003年4月25日号の市報「ひたちなか」で発表された化石は、翼竜ではなくて、巨大スッポンの化石であることが、ミュージアムパーク茨城県自然博物館の調査で判明したとのことです。白亜紀には変わりないとのこと。

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市報ひたちなか No.628(2021年2月10日)8面の記事


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Updated: 2014.04.21, edited by N. Yamamoto.
Revised on May 21, 2014, Aug. 26, 2014, Jan. 12, 2015, Mar. 16, 2015, May 03, 2020, May 04, 2020, Jan. 14, 2021, Feb. 02, 2021, Feb. 12, 2021, May 09, 2021 and Mar. 30, 2022.