恐るべき吸血虫「山ビル」とは?
登山の途中、登山道でビルの襲撃に会い、靴の中や、膝下、脇腹、首筋、背中などにビルに侵入され、血を吸われて、真っ赤に染まった経験はありませんか!
実はビルが体に侵入して血を吸っていても、気が付かない場合が多いのです。
登山道で休憩した時に靴を脱いだり、汗を含んだ下着を替えたりする時に気づいたり、同伴者が外から見て血がシャツなどに滲んでいるのを発見したりして分かる場合が多いです。
人の血をたらふく吸ったビルは真ん丸に太り、人体にしっかり食いついています。
毒蛇のように、生命に危険を及ぼすほどではありませんが、体中を血だらけにして、何とも気持ちの悪い生物です。気の弱い女性なら卒倒してしまうかもしれません。
山ビルの生態について少し触れておきましょう
山ビルは日本では唯一の陸生吸血鬼、否、吸血種です。
北海道には生息が確認されていません。東北秋田から沖縄まで広範囲に生息していますが豪雪地帯の新潟、富山、石川県の生息報告もほとんどありません。
関東方面では丹沢が最も有名な山ビル生息地です。
山ビルの大きさは2~3㎝ですが、ゴムのように伸びる性質があり、伸びると4~6㎝にもなります。
不気味な風体をしていますが、眼点が10個あり、明暗が感知でき、物の動きを僅かですが識別できるようです。
2つの吸盤があり、前吸盤と後吸盤を使って尺取虫のように器用に歩行します。移動速度は意外と早く、1分間に1mくらいの速度です。人の足下に取りついたビルは瞬く間に首まで達する動きをします。
人や動物の呼気や振動、熱、臭いに敏感に反応して、素早く取りつきます。
山ビルの口には鋸のような歯があり、皮膚に食いつくと、口からヒルジンという、血液が凝固しない特殊な物質を送り込んで、1時間以上かけて吸血します。
その吸血した量は2~3mlにもなります。自分の体重の10倍以上にもなる量です
人間は1時間もの長い間吸血されていても、痛みがほとんどありませんから、大体は気づかないのです。
満腹になると人体から自分で離脱しますが、ヒルジンという物質が肌に残っている間は、血が止まりません。
本当に始末に負えない厄介な吸血虫です。
因みに、山ビルは1度満腹になるまで吸血すると、その血だけで2年間も生存できる、と言われています。
すごい生命力のある生き物です。
山ビルの生息環境
山ビルの活動時期は大体4月から11月頃です。乾燥に弱い生物、という特徴があります。
冬眠はしないで、気温が10℃、湿度が60%以上なら冬でも吸血します。
特に5月から10月の気温25℃以上、雨が降り、あるいは雨上がりのような多湿環境を最も好み、活動も活発となります。
標高が500m~600m以下の湿地帯、沢沿い、林地帯、土や石の下、落ち葉の下、登山道の広葉樹の葉の裏、湿った笹の下、植林地帯、獣道、一般の登山道など、様々な場所に居て、獣(サル、シカ、イノシシ、ウサギ)や人間が通る時を狙っています。
山ビルは林の木の葉っぱの裏側にもいます。
林の中の登山道を歩いていると、人を感知して、狙いすましたようにポトリと落ちて頭や肩などに取りつき、素早く首筋などで吸血します。
よく整備された登山道や民家のある山里には山ビルが居る確率は低い。
山ビルの対策
●山ビルを身体に侵入させない対策(服装)
とにかく肌の露出を最小限にします。長袖を着用し、首にはタオルを巻く、そして足下にはスパッツを履く。これが基本の服装です。これでも僅かな隙間から侵入してきます。
女性ならストッキングが有効です。男性ならコンプレッションタイツやサポートタイツなども有効です。
タイツと靴下と長ズボンとスパッツと長袖シャツ、このスタイルが有効です。
シャツの裾は必ずズボンの中に入れます。ズボンの裾は靴下の中に入れましょう。
恰好は悪いが山ビルの侵入を防ぐなら最低、このくらいはしなくではなりません。
防護策としては
食塩水(濃度20%以上)をスプレーに入れて、足下に予めスプレーしておく。
ビル避けスプレー(忌避剤)で足下、靴の中、靴下の中、外、ズボンの中、外、スパッツの外、中、シャツ、首タオルなどに、しっかりスプレーしておく。
忌避剤スプレーには
「ヒル下がりのジョニー」
「ヤマビルファイター」
などがあり、ドラッグストアーや登山装備専門店などで売られています。
こちらの画像からも購入できます。
山ビルに食いつかれたら
山ビルに塩を降りかける、ライターの火などであぶる、あるいは指で引き剥がす。多少強引さが必要です。
引き剥がした山ビルは必ず塩か薬剤で殺しておいてください。生きたまま放置すると、やがて増殖します。
山ビルに食いつかれた後の処置は、傷口を指でつまんで、しっかり血を押し出してください。山ビルのヒルジンを出し切るためです。
これをしませんと血がなかなか止まりません。
そして最後に傷口を消毒用エタノールで洗い、抗スタミン剤を塗り、絆創膏を貼っておきます。
山ビルの生息域が広がっています
山ビルはサル、シカ、イノシシ、野ウサギなどに取りついています。
森林開発などでエサが不足して、これら動物の生息域が里山まで広がってきています。
従って、山ビルの生息域も同様の広がりを見せ、地域によっては駆除活動や、山林の林道、登山道の整備活動が活発化してきています。
今回のまとめ
- 山登りの天敵「山ビル」の対策を知っておこう
- 恐るべき吸血虫「山ビル」とは?
- 山ビルの生態について少し触れておきましょう
- 山ビルの生息環境
- 山ビルの対策
- 防護策としては
- 山ビルに食いつかれたら
- 山ビルの生息域が広がっています